3 昼食の時間も過ぎた頃。 寮監は自室で書類の整理に勤しんでいた。 「今月の門限破りは少し多いな。やはり夏休みに入った事が大きいか……」 授業がある期間ならばともかく、夏休みとなると生徒の気分は緩みがちになる。青春を謳歌したい年頃ではあるのだろうが、そのような理屈は彼女には通用しない。 「罰則をさらに強化する必要があるか……。寮内清掃、プール清掃はもう散々やってしまっているし――あすなろ園へのボランティアという手もあるが、あそこはな……」 呟く寮監はどこか切なそうで、その視線にはいつもの尖った感がなく、まるでどこか遠くを見るかのようである。 そうしていれば、言い寄る男がいてもおかしくないだろうが、考えている事が門限破りに対する罰則だというのだから、それも難しいのかもしれない……。 あすなろ園の子供達は、年に一度常盤台中学学生寮が外部に公開される、盛夏祭に呼んだりするなど、まだ親交はある。だが、あそこに行くと例の人に会ってしまうのが、彼女にとっては少し辛かった。 今思うと懐かしくも楽しい記憶ではあったのだが、やはり夢破れたというのは辛い。それに何より、 (……アイツらに知られた事が最も腹立たしい……!) 湧き立つ怒りを抑えながら、寮監は新たな罰則を考える。 おそらく新しい罰則は、例の人間が最初に受ける羽目になるだろう、というどす黒い感情を込めながら――。
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