2人組の片方。ワンピースを着た少女、
「ねーねー、一方通行ー。ミサカはミサカはドーナツが食べたいー、と上目遣いで言ってみるー」
一方通行は鬱陶しそうに、裾を引っ張る打ち止めの手を解くと、その顔を彼女に向けた。
「ドーナツだ? 全く、テメェは会話に脈絡ってもンがねェなァ。今は時間がねェンだ。ドーナツなら後で買ってやっから、さっさと行くぞ」
言うだけ言って先に進もうとする一方通行に、打ち止めは彼の腕を掴んで強制的に歩みを止めさせた。
「違う違う。ミサカが言っているドーナツは、今あそこで人がいっぱい並んでいる所のドーナツなんですよー」
「ドーナツなンてどこのも変わりゃしねェだろ。マスタードーナツので十分だろ。並ばなくてもいいしな」
「ぶー! ぶー! 遺憾の意を込めて、ミサカはミサカは真っ向抗議してみる!」
頬を膨らませて抗議する打ち止めを、一方通行は鼻で笑って一蹴した。
「抗議だァ? 笑わせンな。どォせ金持ってるのは俺だ。この場での選択権は俺にあンだよ。グダグダ言ってる暇があンならキビキビ歩け」
「独裁政権反対ー! 日本は民主主義なんだぞー!」
「民主主義ってンなら多数決か? 残念だが、それだと一生1対1だ。結論なンて出ねェよ」
「……甘い。あそこのドーナツ並に甘い。忘れた? 多数決を取るのなら、私にはミサカネットワークがあるのを」
打ち止めの言葉に、一方通行は目を見開いた。
「……ちょっと待て。ドーナツ如きの為に『
「目的の為なら手段を選ばない! って、ミサカはミサカは決め台詞っぽく言ってみる! さあ、『妹達』! ドーナツを買うべきか否か、結論を!」
打ち止めが自信たっぷりにそう言ってから、数秒。自信に満ち溢れていた打ち止めの顔は、驚愕へと変わった。
「な、何と……! 驚きの結果が……!」
「――で、ミサカネットワークでどんな結果が出たンだ? あァ?」
一方通行は打ち止めの頭をガシッと掴んで自分の方に向けた。
加えられる握力と一方通行のドスの効いた目で睨まれ、打ち止めはだらだらと冷や汗を流している。
「え、えーと……、満場一致で『買うべき!』だそう――ギャアッ!」
「嘘はよくねェよなー、打ち止め? 今ならまだ許してやるから、本当の答え言ってみな?」
「痛い痛い痛い! って、ミサカはミサカはひたすら主張してみるー!」
ギリギリと強められる握力に、打ち止めは苦悶の叫びを上げるが、一方通行は打ち止めが本当の事を言うまで止めようとはしない。
「わかったわかった! 言います! 全員が全員、『くだらない事でネットワーク使うな。反省の意味を込めて全会一致で買わない』だそうですー!」
本当の答えを聞けたから、というよりは思い通りの答えが得られたので、一方通行は手を打ち止めの頭から離した。
「はン。最初っからそう言ってりゃいいンだよ。全くくだらねェ事で時間使っちまった。マジで急ぐぞ、コラ」
「は、はいぃ〜……と、ミサカはミサカは頭をくらくらしながら大人しくついて行く〜……」
スタスタと歩いていく一方通行を、ふらふらした足取りの打ち止めが追っていく。そんなデコボココンビの行く先は果たしてどこなのか。それはこの話では一切関係ないので、分からないままである――。