とある学生寮の寮監様




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 東京西部にある学園都市。

 二三の学区に区分けされたこの街の第七学区には『学舎まなびやその』と呼ばれる、五つのお嬢様学校による共用地帯がある。洋風のデザインの建物が立ち並び、石畳が敷かれた町並みは、ここは本当に日本かと思わせる。

 そんな学舎の園の一角を占めるのが、常盤台中学。超能力者レベル5二名、大能力者レベル4四七名、その他の生徒は全員強能力者レベル3という、超名門校にして、世界に名立たるお嬢様学校である。

 常盤台中学の学生寮は、学舎の園に一つと、その敷地外にもう一つ存在する。

 その学生寮は学舎の園と同じく、学園都市の近代的な街並みの中で存在感を主張する、三階建ての洋風建築となっている。また内装も、まるで貴族の邸宅かと錯覚させるほどのものに仕上げられており、生徒達の部屋は高級ホテルにも劣らない。

 設備も、図書室は下手な学校の図書館を超える蔵書量だったり、ステージが組めるほどの中庭があったりと、他の学校の学生寮とは比べ物にならない。

 しかし、そんな常盤台中学学生寮にも、大半の学生寮と変わらないものがある。いや、もしかすると、常盤台中学学生寮の方が厳しいのかもしれない。

 それは――『寮則』――。

 門限や寮内での生活についてまとめられたルールだが、お嬢様学校である事、女子校である事がその寮則をさらに厳しくしているのかもしれない。

 普通ならば、仕方ないと諦め大人しく寮則に従うか、もしくは反発して寮則を平気で破るようになるかだが、常盤台中学学生寮では別である。寮則とは、絶対順守の鉄の掟。破る者には躊躇なく地獄の制裁が加えられる。

 そんな寮則を生徒に徹底させる役目を担う人物こそ、常盤台中学学生寮にその人ありと謳われる、寮監という人物である――。



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